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2011年4月12日火曜日

パーソナル・コミュニケーション

ある精神科医が、大学を退官する最後の授業で、「コミュニケーション」について述べている著書がある。
彼は、医者として、教官として、患者さんに対して「個のコミュニケーション」に徹してきた。
彼は、かつてマスコミ界に身を置いていたことがある。知る人ぞ知る、フォーククルセーダーズというバンドで一世風靡した北山修氏である。「帰ってきたヨッパライ」はレコード大賞特別賞に輝いた。その時彼は、医学生であった。

大学卒業後、彼はマスコミの前から姿を消した。そして、自分の世界に身を投じていった。それは、マスコミにさらされる世界とは真逆の人間の心の領域、内なる世界である。彼は、注意深く心の領域に取り組み、そして、決して表に出ないようにした。
彼は、学生に語った。
「精神科医は患者さんの秘密を犯してはならない、秘密が保たれることを保証しなければならない。」「不特定多数の心を扱うテレビをはじめとするマスコミに対して、私たちは、ひとりのパーソナルな心を扱う専門家である。」

著者の講義は、文面からもわかりますが、非常に優しい言葉づかいであり、丁寧な口調で進められています。たいへん、感銘を受けました。
特に、彼が芸能界にとどまらなかった理由は、次のように記されていました。

このマス・コミュニケーションの時代に、君たちが臨床心理学の領域で治療者になるつもりならば、裏を取り扱う覚悟、マス・コミュニケーションにはのらない、のせられない見にくいものを取り扱う覚悟が求めらる。
これが、私がテレビと決別し、そして再会しているこの授業でのメッセージです。
臨床心理学の世界になぜ入ったのか。それは、マス・コミュニケーションからこぼれ落ちているものを取り扱いたかったから。

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