つい最近、「歓喜の仔」を読み終えました。この書は、直木賞作家、天童荒太氏による一連の「仔」シリーズの一面で、昨年の11月に上梓されたばかりの単行本ハードカバーです。
これまで、「永遠の仔」「悼む人」に並び三部作といってもよいのではないかと感じられます。
正直言って、この書は、読み始めがかなり困難で、設定や構成の独特の世界には中々入り込めない違和感が十分でした。ただ、登場人物である子供達の視線に立つことにより、垣間見えることから、自分のかつての子供の頃の記憶にリンクすることによりゆっくりと、牛歩で読むしかありませんでした。
登場する幼い兄弟妹は、生活苦にさらされた社会の下層部の闇を背負っています。
読み進める中でも、決して楽しい気分にはなり得ず、むしろ、気が重たく解決できない矛盾をますます増大させることになります。そして、読後には、何とも言えない辛く悲痛な気分です。
誠、正二、そして香の三人は、社会の底辺にうごめく弱者の象徴であり、純粋で確かな眼差しを秘めた、私たちが忘れ去った子供の記憶なのです。
人生の不条理や矛盾をさらけ出しながらも、未熟な子供が葛藤していく...。
小説は、現実を超えた、時間旅行をさせてくれます。
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